※ この物語はフィクションです。
静かすぎる平和の中で、時間だけが遅れ始めた。
忙しい人ほど、遅れる自分を責める。その責める気持ちを敵の入口にする。
拾った電池の夜から、街の時間だけが遅れ始めた。

拾った電池を机に置いた夜から、平和は静かすぎた。

信号は正しい。けれど人の足だけが、横断歩道の途中で遅れていく。

声もステップも半拍遅れる。怠けているのではない。時間そのものが重い。

紫の時計スライム、スロウモーションマン。針を舌のように伸ばし、街の歩幅を奪う。

長い針が五人の足首へ巻きつく。第5部の竜とは逆向きの、同じ時間系統だった。

体が遅くても、選ぶ速さまでは渡さない。けんたの胸に青い光が残った。

ねじる竜、遅らせるスライム。向きが違えば、中心の弱点も読める。

砂は落ちない。けれど人の焦りだけが、先に底へ溜まっていく。

けんたの波が粘る空気をかき分け、止まった時間に一本の道を通した。

たえのステップが、水滴の間へ正確な拍を置いていく。

ふかまっくすが見抜いた。力の中心は文字盤ではない。針を動かす根元だ。

ゆうすけの蹴りが針を壁へ縫い止め、市民から狙いを外した。

開いた一瞬へ、りょうたの拳が入る。止まった秒が、ひびの中で動き出す。

五人の拍が一つの渦になる。アンカレ・タイムブレイク。

怪物がほどけ、信号と足がもう一度同じ時間を歩き始めた。

落ちない砂が残った。次の敵は、時間ではなく待たせる心を狙っている。
つづく