※ この物語はフィクションです。
次に狙われたのは、子どもが体を動かす時間だった。
運動不足の大人ほど、子どもには動いてほしいと願う。その矛盾が、この話の熱になる。
若者がジャブを覚え始めて十日後、次の標的は子どもの授業だった。

たえの予感は当たった。次に狙われたのは、子どもが動く時間だった。

運動時間を減らす案は、予算の項目に紛れていた。旗より先に、書類が立っている。

昼の画面が、福岡市内の学校から運動の授業が消えるかもしれないと告げた。

ゆうすけあり得ない。

黒幕は不活発連合。動かないことを、正義のように配る組織だった。

グラウンドの白線は、雨のあとも残っている。書類の中だけが、線を消したがっていた。

リモコン、計量、集音、時計、遮光、画面。そして制度。攻撃は、社会の部品へ上がった。

たえは声を荒げない。ただ、白線の前に立つ子どもたちを見ていた。

たえ子どもにとって、運動は心も体も成長させる。

旗の模様は、教室の掲示物を真似た偽物だった。だが、言葉だけでは旗は揺れない。

りょうた運動会を開く。大切さは、走る音で証明する。

福岡小学校の白線に五人が並ぶ。その後ろに、子どもたちの靴が揃った。

走る音が、旗より大きくなる。足が、地面を思い出した。

子どもの息が白い。親の拍手が、ソファを遠ざけた。

授業は残った。残ったことを、けんたは勝利とは呼ばなかった。
けんた油断はできない。

白線が残った。禁止の紙より細い線が、街を動かし直す。
つづく
未解決記録
運動時間を減らす文書は、会議が開かれる三日前に完成していた。白い点は決定を操るのではなく、人が反対を諦める時刻を先に知っていた。