※ この物語はフィクションです。
画面いっぱいの広告には、汗だけが映っていなかった。
時短も美容も大事。でも、体を置き去りにする近道は、だいたい誰かの商売になる。
影の次に来たのは、拳ではなく、微笑んで届く画面だった。

同じ顔の広告が画面を埋める。飲む、貼る、寝る。汗だけが、どこにもない。

たえこの人、本当に信用できるのか。

ドメイン、決済、使い回された写真。福岡中へ配られる「楽」は、一人の部屋から出ていた。

狭い部屋に三台のモニター。広告の顔は、若者自身の顔だった。

ゆうすけこんなに若くして、何を考えているんだろう。

五人は若者をアンカレッジへ呼んだ。拳で潰すためではない。話を聞くためだ。

土間の五足に、灰色の靴が一足加わった。

若者の声は強い。でもその強さは、誰かの焦りを売るための強さだった。

若者人は楽をして成功する方法を求めている。それを提供しているだけだ。

りょうた短期的な成功でも、長期的には人の健康を害する。

けんた正しい方法を、学ぶべきだ。

長い沈黙のあと、若者は拳を緩めた。
若者わかった。やめる。正しい健康法を教えてくれ。

緩んだ拳を、ミットが受けた。画面より、床の熱のほうが大きかった。

広告は消えた。若者はキーボードを離れ、ジャブの形から学び始める。

若者は、さとると名乗った。
たえ仲間が増えた。

消えた広告枠に、白い余白が残る。余白からなら、やり直せる。
つづく
未解決記録
同じ広告は福岡中へ届いた。それでも、りょうたの画面にだけ一度も表示されていない。選ばれなかったのか、最初から対象に数えられていないのか。