※ この物語はフィクションです。
時計がずれる。最初は、疲れているだけだと思った。
予定に追われる人ほど、時間の異変に気づくのが遅い。そこを物語の怖さに変える。
片耳のイヤホンを回収したあと、福岡の時計が一分ずれ始めた。

駅の時計と手元の時計が、一分ずれた。小さなずれほど、最初は疑われない。

同じ改札を二度通った気がする。映像は一回、記憶だけが二重だった。

壊れた腕時計の裏に、ドライバーの滑り跡。専門家なら残さない傷だ。

空にひびが入る。時計の文字盤が鱗に、針が牙になった。カオスモンスターが街を飲み込む。

タイムトラベリンダー未来は壊滅的です。力が必要です。

昼の時計が繰り返し鳴り、下校の合図が朝に響く。福岡の一日が畳まれていく。

りょうた正しい過去じゃない。選び直せる未来を取りに行く。

過去へ飛ぶのは、懐かしさではない。戻れない時間に、敵の罠がある。

木造の軒と、まだ低い福岡の空。今のビルは、種のような影でしかなかった。

過去では、竜はさらに大きい。時間の流れそのものを巻き取っていた。

けんたの波が、ほどけた時間をたぐり寄せる。

たえの舞いとふかまっくすの光が目を奪い、ゆうすけの蹴りが弱点の針を捉えた。

りょうた未来のITパワーパンチ。

文字盤が砕け、針が雨のように落ちる。使者の影は、礼をして薄くなった。

空に五つの虹。今の福岡の時計が、正しい音を取り戻した。

逆回りの針だけが残った。時間は直ったが、誰かが触った跡は消えない。
つづく
未解決記録
壊れた腕時計の履歴には、時刻より先に『次に諦める予定』が保存されていた。未来を見たのではない。毎日の選択から、未来を計算していた。