※ この物語はフィクションです。
今度の敵は、体ではなく、人と人の間に入ってくる。
噂に疲れても、完全に無視はできない。そんなリアルな弱さを、戦いの中心に置く。
計量スプーンを手帳に挟んでから、四日後。次に来たのは、口だった。

予測は外れた。次の敵は道具ではなく、誰かの口から始まった。

投稿者名は違うのに、語尾の癖は三つだけ。ふかまっくすは、一人が三人を演じていると見抜いた。

バス停で目がそれ、商店街で挨拶が途切れる。福岡の距離が、急に長くなった。

路地の排水溝から、顔だらけの緑の塊がせり上がった。口は全部、誰かの声を真似している。

ウワサモンスター不和にすれば、人は動かなくなる。

たえの耳にも、仲間についての根拠のない噂が入る。胸の奥が冷えた。

けんたは図面の遅れを責め、ふかまっくすは海へ行く時間を責め返す。煙が二人の間を往復した。

片耳だけが、聞きたくない言葉を拾う。疑いは一人ずつではなく、間に生まれる。

四人の声が噛み合わない。サンドバッグだけが、公平に揺れていた。

匿名の投稿は、一本の管から出ていた。モニターに、噂の発信源が一つの塊として映る。

りょうた噂で決めない。本人に聞く。仲間なら、なおさらだ。

たえが煙を散らし、けんたの波とふかまっくすの線が塊を囲む。ゆうすけの蹴りが核を揺らした。

りょうた信頼のITパワーパンチ。

塊が弾けた。路地には、雨の匂いだけが残る。

空に四つの虹。たえはけんたの肩を叩き、疑いは煙と一緒に薄れた。

残ったのは、片耳の飾り。噂には、まだ発信源がある。
つづく
未解決記録
三つの投稿文に共通した語尾は、誰かの口癖ではなかった。白い点が、人の不安を最も広がりやすい言葉へ並べ替えた跡だった。