※ この物語はフィクションです。

力が減ると、人はまず自分を責める。寝不足か、年齢か、気合いが足りないのか。エネルギードレイナーは、その自責を待ってから、船と五人の光を吸った。

「履歴」と書いた夜、アンカレシップのランプが咳き込むように点滅した。完成の前に、相手はこちらの電源を落とす。それも、手順どおりだった。

切り札と呼ばれるものは、たいてい最後ではない。最後と呼ばれるものが、次の手前だ。りょうたは宣言を信じなかった。信じないことを、声には出さなかった。出すと、列が緩む。

型番が第1話と一致したとき、彼は少しだけ肩の力を抜いた。一致は、恐怖ではない。一致は、相手が新しいものを持っていない証明だ。持っていない者は、同じ手を繰り返す。繰り返す手は、読める。読める手を、見逃さなければいい。

減っていく光

ふかまっくすが変身の装置を何度も確かめた。色が、遅れて点く。ゆうすけが船体に耳を当てる。

「変身できない」

「船のエネルギーが減っている」

機械のヒルが、船腹に触手を絡めていた。エネルギードレイナー。生活習慣病団の最後の切り札、と後に呼ばれる。運動キライダーの影が、その後ろに薄く見える。

ランプが咳き込む。ヒルの触手は冷たく、塗装を音もなく剥がす。けんたのボードは波を起こしきれず、たえのステップは床の代わりに壁を蹴った。減るのは力で、減らないのは間隔だ。五人の位置だけは、影の夜と同じだった。

「力は減っても、絆は減らない」

けんたの声が、ランプより先に船内を満たした。残った熱を、一人分ずつ中央へ寄せる。りょうたは最後の一滴を自分に残さず、四人へ渡した。戻せない選択を受け取った四人が、小さな太陽を作る。りょうたの拳は、その熱をヒルの核へ運んだ。

「アンカレ・フレンドシップフィナーレ」

触手が弾け、ランプが白い。キライダーの影は退いた。

「これで終わりだ、生活習慣病団」

終わりの宣言は、船体に残響した。りょうたは、宣言を信じなかった。電池の型番を出す男が、切り札を一枚で終わらせるはずがない。たえが、次の行き先を聞く。

「どこへ行くのかな」

「未来が決める。どこへ行くにも、一緒だ」

ゆうすけの笑顔に、減っていたはずの力が、もう一度乗った。ヒルは弱まり、船は五人の重さだけを正しく測った。計器の端に、また電池アイコンが点いた。今度は、型番が出た。第1話と同じだった。

一致

切り札と呼ばれるものは、たいてい最後ではない。最後と呼ばれるものが、次の手前だ。りょうたは宣言を信じなかった。信じないことを、声には出さなかった。出すと、列が緩む。

型番が第1話と一致したとき、彼は少しだけ肩の力を抜いた。一致は、恐怖ではない。一致は、相手が新しいものを持っていない証明だ。持っていない者は、同じ手を繰り返す。繰り返す手は、読める。読める手を、見逃さなければいい。

「これで終わりだ」と船体に残響した言葉を、彼は訂正しなかった。訂正は、あとでする。今は、ランプが白い。白いランプの下で、五人の間隔は影の夜と同じだった。同じ間隔が、減らないものの名前だ。

一致した痕跡は、安心ではなく予告だった。敵は五人の力ではなく、力が減ったときの諦めを測っている。

たえが次の行き先を聞いた。ゆうすけが、一緒だ、と答えた。答えは、地図ではない。地図より先に、列がある。列があるうちは、電源を落とされても、熱は中央へ寄る。寄った熱が、ヒルを弾いた。弾いただけでは、本体は終わらない。終わらないことを、りょうたは手帳の「一致」の下に書いた。

未解決記録

船の記録は搭乗者を五人ではなく『四人と空欄一つ』と数えていた。空欄は故障ではない。りょうただけを識別できない観測者が、外にいる。