※ この物語はフィクションです。
時を超えた遺産は、立派な石碑だけではない。昔の人が残した歩幅、働き方、休み方、誰かを待つ速度。時計の遺跡は、健康を未来へ渡すための記憶だった。
計器の電池アイコンは、表示されなかった。表示されない変化は、新しい段階だ。帰還した福岡の地面に、時計の遺跡が突然生えていた。針が、石の表面を這っている。
遺跡の出現時刻は、午後二時四分。監視カメラは、石が「生える」瞬間を撮っていない。撮っていない瞬間に、人の記憶だけがある。第5話と同じだ。機械より先に、頭が二重になる。
履歴を書き換えれば、動かない街は完成する。完成を望む者は、過去に手を伸ばす。過去に手を伸ばす者の動機は、未来の笑顔ではない。笑顔のない完成だ。その仮説は、やがて映像になる。映像になる前に、石は沈んだ。
遺跡
市民が、遺跡の周囲で立ち止まった。観光ではない。不安の輪だ。石は、昼間なのに冷たい。りょうたは掌をかざした。第5話の竜、第11話のスライム。時間をいじる系統が、地面に降りてきた。
内部に、円い扉があった。タクヤが来た夜と同じ、耳鳴りがする。
けんたが境界へ片足を置き、振り返った。「歴史を見るんじゃない。迎えに行くぞ」。そう言って、先に閾を跨いだ。
扉の向こうは、煙と旗と、古い金属の音だった。過去の英雄たちが、今の福岡を守るための原型のように、戦っている。歴史を盗む影、タイムジャッカーが、旗の色を剥がしていた。
「歴史を、正しく保つ」
五人は過去の英雄の横に並び、同じ拍で踏み込んだ。メダルの光が、戦いのあと、掌に残る。ふかまっくすが石の模様を見てうなずく。
「バランスは、保てる」
扉は閉じ、遺跡は地面の高さへ沈んだ。今の福岡の時計が、また正確に歩く。
「時を超えても変わらないものがある。絆だ」
りょうたの声は、過去の煙の匂いを、まだ少し含んでいた。手帳の系列に、彼は「履歴」と書いた。リモコンは習慣、時計は時間、遺跡は履歴。動かない街は、過去を書き換えれば、完成する。
履歴
遺跡の出現時刻は、午後二時四分。監視カメラは、石が生える瞬間を撮っていない。撮っていない瞬間に、人の記憶だけがある。第5話と同じだ。機械より先に、頭が二重になる。
履歴を書き換えれば、動かない街は完成する。完成を望む者は、過去に手を伸ばす。過去に手を伸ばす者の動機は、未来の笑顔ではない。笑顔のない完成だ。その仮説は、あとで映像になる。映像になる前に、石は沈んだ。
メダルの光は、掌に残った。残った光を、ふかまっくすは石の模様と照合した。照合は、完全ではない。完全ではない照合を、彼らは「保てる」と呼んだ。呼べる範囲で、扉は閉じた。
履歴は消せる。けれど、消した跡は残る。りょうたは遺跡よりも、その跡を隠した誰かの手つきを覚えた。
りょうたは手帳の系列に「履歴」と書いた。リモコンは習慣、時計は時間、遺跡は履歴。動かない街は、過去を書き換えれば、完成する。完成の手前で、相手はこちらの電源を落とす。その予測は、次のランプで当たる。
未解決記録
遺跡の床には、まだ歩いていない五人の足跡があった。ただし五人目だけ輪郭がなく、白い点が空欄のまま明滅していた。
