※ この物語はフィクションです。

未来の暗さは、巨大な災害よりも、笑顔のない日常として怖い。ミリアが見せた映像には、誰も倒れていない。ただ、誰も自分から動こうとしていなかった。

型番が第1話と一致した夜、未来の少女ミリアが、渦の映像を掌に乗せて現れた。画面の中の福岡に、笑顔がなかった。終わりの宣言の直後に、未来が来る。相手は、時間を前後に使える。

笑顔のない未来は、データとしては弱い。映像は、操作できる。操作できる映像を、ミリアは持ってきた。持ってきた者が、味方かどうかは、別の問題だ。味方かどうかより、映像の中に電池がないことが、りょうたには重要だった。未来の完成形に、リモコンがない。リモコンがない完成は、使用者の仕事ではない。設計者の仕事だ。

設計者の顔は、まだない。ない顔を、五つの選択が、少しだけ遠ざける。遠ざけるだけで、消えない。消えないものを、彼は「未解決」と書いた。未解決は、バグの別名ではない。仕事の別名だ。

笑顔のない映像

黄色い目の黒い渦が、活気を音ごと飲み込んでいる。店の明かりが内側から消える。子どもの声が、渦の縁で途切れる。

「未来から来た。未来は暗い。力が必要です」

ゆうすけが、画面ではなく、今の窓の外を見た。まだ、夜景はある。その差が、選択の余地だった。

「こんな未来には、しない」

ミリアが、五つの心の宝石を求めた。勇気、友情、愛、知恵、希望。試験は、外の敵ではなく、五人の内側だった。りょうたは孤独な画面の夜を越え、けんたは落ちた波の上で立つ。たえは子どもの手を思いながら、自分の疲れも隠さないと決めた。愛は、自分だけを人数から外さない。ふかまっくすは白い画面に線を戻し、ゆうすけは連敗のあとのキックを選んだ。宝石は、掌ではなく、その選択の中で灯った。

五つの灯を、渦の中心へ重ねる。

「これで、救える」たえの声が、渦の縁を震わせた。

黄色い目が、一度、まばたきする。暗黒が、早朝の色へ薄まる。ミリアが礼を言った。りょうたは首を振った。

「僕たちみんなの力だ」

渦は晴れた。今の福岡の窓に、まだ人の影が動いている。未来は、確定ではなかった。選択の束だった。手帳の最後に、りょうたは「動機」と書いた。動かない街を作りたい者の動機は、楽ではない。完成した未来に、笑顔がない。笑顔のない完成を望む者は、人を愛していない。愛していない者の顔を、彼はまだ見ていなかった。リモコンの男は、顔を見せすぎる。見せすぎる顔は、本体ではないことが多い。

未解決

笑顔のない未来は、データとしては弱い。映像は、操作できる。操作できる映像を、ミリアは持ってきた。持ってきた者が、味方かどうかは、別の問題だ。味方かどうかより、映像の中にリモコンがないことが、りょうたには重要だった。未来の完成形に、リモコンがない。リモコンがない完成は、使用者の仕事ではない。設計者の仕事だ。

設計者の顔は、まだない。ない顔を、五つの選択が、少しだけ遠ざける。遠ざけるだけで、消えない。消えないものを、彼は「未解決」と書いた。未解決は、バグの別名ではない。仕事の別名だ。

渦は晴れた。今の福岡の窓に、まだ人の影が動いている。未来は、確定ではなかった。選択の束だった。束を、宝石とは呼ばない。呼ばないまま、たえは「救えた」と言った。言った言葉を、否定しなかった。否定しないことと、信じることは、違う。

五つの心の宝石は、奇跡の道具ではなかった。五人がこれまで選び直してきた、小さな日常の結晶だった。

ミリアは礼を言って、映像を閉じた。閉じた映像の中に、電池はなかった。なかった電池が、いちばん大きな手がかりだった。手がかりを、急いで名指ししない。名指しは、次の光を待つ。

未解決記録

ミリアの未来で消えていたのは笑顔だけではない。寄り道、言い直し、予定外の一歩。誰かが、人間の予測できない選択から順に消していた。