※ この物語はフィクションです。

福岡のジムから宇宙へ行くなんて、笑ってしまうくらい大きい。けれど、身近な体を守る話は、遠い場所の命にもつながっている。アンカレシップは、その飛躍を本気にするための船だった。

中央郵便局の消印を確認した翌朝、ゆうすけの通信機が、海ではない方向から鳴った。音の粒が、星の間隔を持っている。観察者は市内にいる。だが、助けを装う声は、もっと遠くから来ることもできる。

SOSの波形を、ふかまっくすが印刷した。助けの波形と、罠の波形は、似ている。罠を恐れて、本物のSOSまで見捨てるわけにはいかない。五人は危険を消せないまま、応えることを選んだ。場所が変わっても、相手の手法は節約される。節約する者は、発明者ではない。

計器の電池アイコンは、型番を出さなかった。出さない変化は、初めてだ。初めての変化を、りょうたは喜ばなかった。変わるときは、相手が焦っているか、段階が上がっている。どちらでも、次は重い。

SOS

「宇宙からの信号だ」

たえが空を仰ぐ。福岡タワーの向こうで、赤い船体が朝日を切っていた。アンカレシップ。改造の跡が、ふかまっくすの線に似ている。りょうたはグローブを握ったまま、タラップを見た。

「無視はできない」

エンジンの熱が、博多の風と混ざる。窓に五つの顔が並び、街が模型の大きさへ遠ざかる。那珂川が線になる。いつもの床がない場所で、キックの反動は星の砂になった。

暗黒は、海より静かだった。その静けさの真ん中に、スペースモンスターがいた。岩と牙と、SOSの発信源。助けを装って、近づくものを砕く。生活習慣病団の手法と、似ている。楽を差し出し、足を止める。

ふかまっくすが船の壁に新しい図を描き、たえが回転をリズムに変え、ゆうすけが反動を蹴りに乗せる。りょうたの拳が、星の砂を巻いて前へ出た。

「アンカレ・コズミックストライク」

牙が折れ、偽の点が消える。下降の窓に、福岡の夜景がいつもの密度で広がった。

「戦いは、地球だけじゃない」

りょうたの声は、重力の底で、少しだけ安堵していた。船内の計器に、小さな電池アイコンが点灯していた。型番は、表示されなかった。表示されないことが、初めての変化だった。

型番のない変化

SOSの波形を、ふかまっくすが印刷した。助けの波形と、罠の波形は、似ている。似ているものを、相手は何度も使う。楽を差し出し、足を止める。宇宙でも、同じだ。場所が変わっても、手法は節約される。節約する者は、発明者ではない。

計器の電池アイコンは、型番を出さなかった。出さない変化は、初めてだ。初めての変化を、りょうたは喜ばなかった。変わるときは、相手が焦っているか、段階が上がっている。どちらでも、次は重い。

下降の窓に、福岡の夜景がいつもの密度で広がった。タワー、川、ジムの街区。宇宙も広いが、床はここにある。床がある場所へ、船は帰った。

宇宙から戻っても、床の汗は乾いていなかった。大きな戦場を知ったあとほど、五人は近い日常の重さを軽く扱えなくなった。

りょうたは、型番のないアイコンを手帳に模写した。空白の型番は、空白の差出人に似ている。似ている空白が、次の遺跡につながることを、そのときはまだ、線としては引いていなかった。

未解決記録

偽のSOSは、過去に福岡で発せられた救助の声を学習していた。遠い宇宙から来た罠ではない。福岡で集めた助けの記録が、宇宙へ持ち出されていた。