※ この物語はフィクションです。

友情の敵は、裏切りの大事件として来るとは限らない。返事の遅さ、既読のままの画面、忙しいからという言い訳。ダークフレンドシップは、その小さな空欄を冷たい手紙に変えた。

白い糸を並べた夜、ゆうすけの郵便受けに一通の手紙があった。封筒は濡れていない。中身だけが冷たい。「友情の試練が迫る」。たえは封筒を子どもに見せなかった。

中央郵便局の消印は、午前中の区分だ。午前中にこの手紙を出した者は、市内にいる。市内にいて、五人の関係を観察している。観察は、悪意より先に、興味の形をとる。興味の形のまま、楔になる。

りょうたは、疑われた夜のことを、表にしなかった。表にすると、また煙が出る。煙を出さずに、列を保つ。それが、この回の答えだった。答えは、派手ではない。派手ではない答えが、この男の小説では、いちばん高い。

冷たい手紙

噂の塊は、関係を煙にした。今度の影は、関係の通路そのものを折る。紫がかった影が人の間に割り込み、肩と肩の距離だけを不自然に広げる。ダークフレンドシップ。

「これが試練か。負けない」

けんたの声が、影の隙間に落ちる。隣にいたはずの声が、半拍遅れて届く。たえの胸に小さな棘が入る。けんたとふかまっくすの言い合いが、噂の夜を思い出させる。ゆうすけの拳が、りょうたの背中の少し後ろで止まる。

手紙は、予告だった。予告できる相手は、五人の関係を観察している。観察している者は、近くにいる。

ふかまっくすが、線を引き直すように言った。

けんたが、自分から溝を越えた。「返事が遅いだけで、裏切りにして悪かった」。謝罪は楔より短く、楔より深く届いた。

影は、その言葉を試すように、列の中央へ楔を打つ。りょうたは四人の肩を見た。疑いは煙だった。残るのは、雨の夜にうなずいた熱だ。

「試練を越えるから、深まる」

五つの拳が、楔の根元へ重なる。

「アンカレ・フレンドシップブラスト」

影が布のように裂ける。通路が戻る。街のあいさつが、先に出る。

手紙の差出人欄は、空欄だった。消印のインクだけが、市内の中央郵便局のものだった。観察者は、遠くにはいない。福岡の中にいる。

空欄

手紙の差出人欄は、空欄だった。消印のインクだけが、市内の中央郵便局のものだった。午前中の区分だ。午前中にこの手紙を出した者は、市内にいる。市内にいて、五人の関係を観察している。

観察は、悪意より先に、興味の形をとる。興味の形のまま、楔になる。楔を抜いたあとも、観察者は消えない。消えない観察者を、名指ししない。名指しは、また煙を出す。

りょうたは、疑われた夜のことを、表にしなかった。表にすると、また煙が出る。煙を出さずに、列を保つ。それが、この回の答えだった。答えは、派手ではない。派手ではない答えが、いちばん高い。

冷たい手紙は燃えなかった。燃やせないものを前に、五人は互いを疑った時間まで持って帰る。それでも列は、もう割れていなかった。

あいさつが、先に出る街に戻った。戻った街を、勝利とは呼ばない。呼ばないまま、ゆうすけは肩を叩かれた。叩かれた肩が、列の一部であることを、彼はもう疑わなかった。

未解決記録

冷たい手紙は五人の秘密を知らなかった。返信の速さ、立ち位置、視線の順番――外から測れる空白だけで、友情が壊れる言葉を組み立てていた。