※ この物語はフィクションです。

シャドウインベーダーの怖さは暗闇ではない。明かりの下でも自分だけ沈んで見える、あの感じだ。仕事も家事もこなしているのに、どこにも輪郭が戻らない夜を、敵は街へ広げた。

壊れた腕時計を分解すると、中に小さな反射板が入っていた。光を嫌う仕組みだ。次は、光そのものを奪いに来る、とりょうたは予測した。予測は、当たった。

停電ではなかった。電力会社のログに、欠落はない。欠落がない闇は、電気の問題ではない。視覚の問題だ。あるいは、視覚をそう錯覚させる問題だ。ふかまっくすは、影の繰り返し模様を印刷して壁に貼った。貼った瞬間、蛍光灯の下でも、模様だけが少し濃く見えた。

遮光シートの端は、ホームセンターで売っている。りょうたは同じ棚の前に立った。棚のカメラは、前週の金曜に、灰色のパーカーの人物を映していた。顔は、帽子で隠れている。電池を買う人物と、同じ体型だった。近い。まだ、名前ではない。

白い目

最初に消えたのは、街灯の足元だった。白い目だけが、闇の中で開く。シャドウインベーダー。悪意が形を捨てて、夜そのものになった。

「影に隠れた悪意で、この街を侵略する」

ビルの窓が内側から黒く塗られる。人の顔が、照明の圏外へ沈む。動けという命令ではなく、存在を薄くする命令だった。ストレスは心を折り、食事は体を折り、噂は関係を折り、時計は時間を折った。影は、存在を折る。

五人は影の中へ入った。足首から黒い糸が這い、グローブの隙間へ入る。たえのステップが重く、けんたのボードが闇に吸われる。ふかまっくすの線が、紙の上で途切れた。

「このままでは、街が消える」

りょうたの声だけが、白い目に届く距離に残った。

入射角

ふかまっくすが、影の模様を読んだ。同じ形の繰り返し。光の入射角で、消える。

「闇が強いんじゃない。光の角度が、ずらされている」

ゆうすけが蹴りで大きな鏡を起こし、けんたがボードで太陽の最後の筋を拾う。鏡が、闇の中で白く燃えた。りょうたはその筋を拳に束ねた。

「光輝くITビーム」

白い線が影の目を貫く。糸が解け、街灯が咳き込むように点く。博多の夜が、また色を持った。

現場に残っていたのは、黒いフィルム切れだった。カメラ用ではない。窓に貼る遮光シートの端である。犯人は、家庭の窓を知っている。リモコン、計量、集音、時計、遮光。日常の部品で、街を止めている。りょうたは手帳の最後の行に書いた。次は、画面だ、と。

遮光

停電ではなかった。電力会社のログに欠落はない。欠落がない闇は、電気の問題ではない。視覚の問題だ。ふかまっくすは影の繰り返し模様を印刷して壁に貼った。貼った瞬間、蛍光灯の下でも、模様だけが少し濃く見えた。

黒いフィルム切れは、窓に貼る遮光シートの端だった。ホームセンターの棚カメラは、前週の金曜に灰色のパーカーの人物を映している。顔は帽子で隠れている。電池を買う人物と、同じ体型だった。近い。まだ、名前ではない。

光が影の目を貫いたあと、街灯は咳き込むように点いた。点いた光の下で、糸は解けた。解けた糸を、りょうたは拾わなかった。拾うのは形のある証拠だけだ。形のない糸は、記録にしか残らない。

光が戻っても、黒いフィルムは残った。りょうたは、影を消すことと、影が生まれた場所を見つけることは別だと知っていた。

手帳の最後の行に、彼は「画面」と書いた。次は画面だ、という予測は、当たる。当たる予測を、喜びにはしない。当たるということは、相手の手順が見えているということだ。見えている手順の先に、まだ本体はいない。

未解決記録

影は五人の輪郭を学習していたのに、赤だけを最後まで正しく写せなかった。りょうたの影には、観測用の白い点が定着しない。