※ この物語はフィクションです。
仕事の疲れに似た敵ほど、発見が遅れる。
未読メール、締切、寝ても抜けない重さ。健康を気にしている人ほど、無理を日常に混ぜてしまう。
事件は終わったように見えた。
三週間。福岡タワーの足元では、普通の写真がまた撮られていた。
りょうたは、拾わなかった電池の型番だけを手帳に書いた。型番は、市販のテレビ用だった。
市内のオフィスで、同じ午後に業務不能が集中する。デスクに額をつけたまま動かない。過労は、事件にならない。
最初に空を見たのは、ふかまっくすだった。紫の雲が、ネクタイを締めて街の上に座っていた。
雲の腹から、稲妻が街へ落ちる。
ストレスゾーン人々を過度なストレスでダウンさせる。
たえはスタジオで、いつものステップを踏もうとして、爪先が床に貼りついた。
波はある。けれど、けんたの足だけが波へ届かない。疲れは得意な場所から折ってくる。
土間の靴が五足。
グローブをはめ直す指が、わずかに震える。
ふかまっくすまず休める場所を作る。殴るのは、そのあとだ。
雨が窓を叩く。四つが、ここに揃っている。
りょうた仲間との絆が、一番の力だ。
たえが舞い、けんたが気を放ち、ゆうすけが踏み込む。ふかまっくすが位置を組む。
りょうた友情のITパワーパンチ。
雲が裂け、ネクタイがほどける。
空に、二つの虹が並んだ。オフィスの窓が開き、誰かが深呼吸をした。
同じ型番の電池。敵は別でも、仕掛けの指紋は前回と重なっていた。
つづく
未解決記録
ストレス被害の報告書にも、同じ白い点が写り込んでいた。発生時刻ではなく、人が『今日はもう無理だ』と思った時刻だけが記録されている。