※ この物語はフィクションです。
時空の裂け目は派手だが、五人が迷ったのはもっと近いことだった。世界が二つに割れたとき、どちらの日常を守るのか。答えは、片方を捨てないことだった。
「拍」と書いた翌朝、空の別の場所に裂け目が開いた。縁が、時計の針のように鋭い。拍をずらす者が、世界の境界までずらしてきた。
季節が一つずれた交差点で、りょうたは信号の秒数を数えた。秒数は、正しい。正しい秒数の上に、間違った季節が載っている。載せる者は、時間を持っている。時間を持っている者は、第5話と第11話と第15話の系統だ。系統は、一人に収束する。
別の五人の列は、礼とともに消えた。消えた列を、証拠にはできない。できない証拠が、いちばん気にかかる。気にかかるものを、手帳の裏表紙に書いた。本体は、顔を見せない。見せるのは、いつも代理人だ。代理人の先に、動かない完成図がある。
裂け目
交差点の向かい側だけ、季節がひとつずれている。半袖の列と、コートの列が、同じ白線の上に立つ。ふかまっくすは眼鏡を外して拭き、それでも重なりは消えなかった。
裂け目から、異次元の怪物が肩を出した。タイムジャーク。この次元の色を、自分の色に塗り替えるつもりで、口を開く。
「この次元も、もらう」
五人は裂け目を跨ぐ。空気の味が、塩と鉄で、わずかに違う。
「ここは、どこだ」
向こうにも、五色の影があった。こちらの色に似た、別の五人だ。同じ志の、別の列。先頭の男が、手を差し出す。
「僕らは君たちの失敗をしなかった。だから、別の失敗をした。力を合わせよう」
二つの世界の拳が、裂け目の縁で重なる。たえの円が二重になり、けんたの波が、こちらとあちらの海を同時に起こした。
「二つの世界の力を、合わせる」
ジャークの肩が、裂け目の奥へ戻る。縁が、縫われる。元の福岡の空が、一つの夜に戻った。Dの列は、礼とともに消える。
「次も、倒す」
たえの宣言が、縫い目の上で短く光った。裂け目は閉じた。準備は、閉じない。りょうたは手帳の裏表紙に、一つの文を書いた。本体は、顔を見せない。見せるのは、いつも代理人だ。代理人の代理人の先に、動かない完成図がある。完成図を望む者は、もうすぐ焦る。焦る者は、最初の顔を出す。
代理人
季節が一つずれた交差点で、りょうたは信号の秒数を数えた。秒数は、正しい。正しい秒数の上に、間違った季節が載っている。載せる者は、時間を持っている。時間を持っている者は、第5話と第11話と第15話の系統だ。系統は、一人に収束する。
裂け目の向こうの五色は、こちらの五色の鏡のようで、鏡ではなかった。礼とともに消えた列を、証拠にはできない。できない証拠が、いちばん気にかかる。気にかかるものを、手帳の裏表紙に書いた。本体は、顔を見せない。見せるのは、いつも代理人だ。
代理人の先に、動かない完成図がある。完成図を望む者は、もうすぐ焦る。焦る者は、最初の顔を出す。出す顔は、お菓子の玉座の男だ。男を倒せば、事件は止まる。止まることと、解けることは、違う。違うことを、次の霧が証明する。
裂け目は閉じた。だが代理人という言葉だけが残る。誰かが直接来ないなら、誰かを使っている。りょうたは、その距離を初めて測った。
裂け目は閉じた。閉じた空の下で、たえは「次も倒す」と言った。言った言葉は、手順だ。手順があるうちは、季節が重なっても、白線の上で拳を重ねられる。重ねられることが、この回の結論だった。
未解決記録
二つの世界の記録は完全に一致した。四人の識別子と、赤に対応する空欄まで。観測者は一つの福岡ではなく、選ばれ得た全ての福岡を比べている。
