※ この物語はフィクションです。

最後に戻ってきたのは、いちばん最初の弱さだった。座っていたい、後でいい、今日は疲れた。その気持ちは悪ではない。悪に変える者が、玉座に座っていた。

焦る者は、最初の顔を出す。予測は、当たった。裂け目が一つの夜に縫われた翌日、福岡の空がお菓子の甘さで濁った。タワーの足元に、玉座が、第1話と同じ角度で座っていた。

同じ角度の玉座は、同じ男の癖だ。癖は、設計者の癖ではない。使用者の癖だ。使用者を倒せば、事件は止まる。止まることと、解けることは、違う。りょうたは、その違いを、霧が晴れたあとも手放さなかった。

電池の型番を、最初の頁にもう一度書いた。謎は、解けたようで、解けていない。解けていない謎を、動かないまま放っておくわけにはいかない。それが、この男の、唯一の結論だった。結論のあとに、バッグの音がした。音のあいだに、次の仕掛けが、日常の形で混ざる。聞き逃さない。それだけが、探偵の仕事に似ていた。

最初の顔

運動キライダーが、リモコンとハンバーガーを両手に、緑の霧をまとって笑う。何度目かの、同じ宣言。

「疲れているんだろう。もう、ずっと座っていろ」

玉座の肘掛けは、前より高く積まれていた。敗北の記憶を、砂糖で上塗りしている。リモコンの乾いた音が、これまでの記憶を一度に呼び起こす。霧、ソファ、転がる電池。同じ敵でも、五人の足の裏には別の汗がある。

怠けのウイルスが、霧に混ざる。人々の膝が、また家具の形を思い出す。ゆうすけが、霧の手前で止まった。

「休むのは悪くない。いつ休み、いつ動くかは、自分で決める」

五人は玉座へ向かう。最初の虹も、前に霧を割ったときの熱も、この足の裏に残っている。同じ敵でも、同じ五人ではなかった。

キライダーの新武器が光る。リモコンの先が、五人の色を一時的に濁らせる。たえが濁りをステップで払い、けんたが波で照準を外し、ふかまっくすが武器の線を読み、ゆうすけが蹴りで隙間を開けた。りょうたが、その隙間へ両拳を沈める。眼鏡の奥で、これまでの観察が、一つの熱になる。

「これで、終わりだ」

玉座が後ろへ飛び、霧が潮のように引く。リモコンが、もう一度、床を転がった。電池の型番は、最初と同じだった。最初と同じものを、最後まで使い続けた男は、発明者ではない。使用者だ。使用者の奥に、本当の設計者がいるかどうかは、霧が晴れたあとも、完全にはわからなかった。

福岡の空が、普通の青を取り戻す。人々が、自分の足で、駅へ歩く。けんたは空を指さして、笑った。

「福岡を救った。次は世界だ」

りょうたはグローブの紐を結び直した。世界は広い。床は、まだここにある。手帳の最初の頁に、彼は電池の型番をもう一度書いた。謎は、解けたようで、解けていない。解けていない謎を、動かないまま放っておくわけにはいかない。それが、この男の、唯一の結論だった。

アンカレンジャーの仕事は、終わらない。健康を守る限り、この街のバッグは鳴る。鳴る音のあいだに、次の仕掛けが、日常の形で混ざる。りょうたは、その音を聞き逃さないつもりだった。

解けない終わり

同じ角度の玉座は、同じ男の癖だ。癖は、設計者の癖ではない。使用者の癖だ。使用者を倒せば、事件は止まる。止まることと、解けることは、違う。りょうたは、その違いを、霧が晴れたあとも手放さなかった。

電池の型番は、最初と同じだった。最初と同じものを、最後まで使い続けた男は、発明者ではない。使用者だ。使用者の奥に、本当の設計者がいるかどうかは、霧が晴れたあとも、完全にはわからなかった。わからないことを、無理に埋めない。埋めない空白が、正確な終わり方だ。

けんたは空を指さして、福岡を救った、次は世界だ、と言った。世界は広い。床は、まだここにある。広い話と近い床を、同時に引き受ける。引き受けることが、五人の仕事だ。

りょうたはグローブの紐を結び直した。手帳の最初の頁に、電池の型番をもう一度書いた。謎は、解けたようで、解けていない。解けていない謎を、動かないまま放っておくわけにはいかない。それが、唯一の結論だった。結論のあとに、バッグの音がした。音のあいだに、次の仕掛けが、日常の形で混ざる。聞き逃さない。それだけが、探偵の仕事に似ていた。

終わりは派手な勝利ではなく、予定を書き直す手元にあった。明日のレッスンがある。動く予定が残っているかぎり、街はまだ守られている。

アンカレンジャーの仕事は、終わらない。健康を守る限り、この街のバッグは鳴る。鳴る音を、証拠と呼ぶかどうかは、まだ決めていない。決めていないまま、りょうたはレッスンの予定をホワイトボードに書いた。予定があるうちは、街は動いている。動いている街を、次に止めに来る手が、どこかで準備されている。準備の音は、まだ聞こえない。聞こえない音を、待つ。待つことが、この長編の、いちばん正確な終わりだった。

未解決記録

戦いのあと、割れた電池の白い点が初めて消えずに灯った。『四人と空欄一つ』の記録を載せた信号は海へ抜け、まだ誰も知らない優しい声の準備を始めた。